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認知症について困っている事、疑問に思っている事、聞いてみたい事
Q1 意味不明な発語があったときの受け答えをどうやっておられるか。
Q2 在宅におけるリスク管理のためには、家族の協力が必須だと思います。家族指導のポイントがあれば教えていただきたい。1つ1つの事象についてリスクを説明していてもキリがないですよね。家族には概論的なことをどう説明すればよいのでしょうか?
Q3 介護する側が認識しているレベルで家族にもリスクのレベルを認識していただくためにはどのような工夫が必要だと思われますか?
Q4 認認介護が増えています。どうしたら良いでしょう。
Q5 認定調査で調査員は認知症状についてどのように評価しているのか(できているのか)?(本人のみの場合特にギモンです)
Q6 認知機能の評価はどんなスケールが良いのでしょうか?(本人のストレス、客観性、簡便か?誰でもできる、短時間で、万国共通で)
Q7 学習療法的なものを含め専門職は誰でしょうか?
Q8 市町村等の一般市民や子供向けの啓発や正しい理解への取り組みについて紹介して頂ければ幸いです。
Q9 認知症ケアで女性はいろいろ参加して下さるのですが、男性の参加をしてもらう良い方法は?
Q10 施設での問題行動を家族にどう伝えるか。上手な伝え方
Q11 医師会で認知症ケアについてどれだけご理解があるでしょうか。Drによってとても差があると思います。
Q1 意味不明な発語があったときの受け答えをどうやっておられるか。
A1 コミュニケーションが上手くいかないことほどもどかしいことはありません。信頼関係も築くことができませんし、結果として援助も難しくなります。
このようなとき、クライアントはとても不安を感じておられます。あきらめることなく「何とかして理解し対応したい。」と想い続けることがとても大切ではないかと思います。それだけでクライアントは安心され穏やかになられることもあるからです。

発言の内容を理解するために・・・・

・一例を紹介します。認知症の方で失語症のため会話ができず、会話の理解力も不明の方(80代女性)です。
意味不明のとらえ方にもよりますが、身体の不調などを訴えられている場合がありますので、まず表情やバイタルなど身体状況を把握します。次に@食事(水分)・A排泄(排尿・排便)・B気温(暑い・寒い)C睡眠など生理的欲求の充足を考えます。
居心地の悪い環境もあります。他の利用者の視線や声のトーンなどに不快感を示される場合などです。また、援助者の話し方や動作が早すぎる場合も不快感を示されます。
顔の表情や片言の発語のニュアンスにより、明らかに否定的な訴えがあることがありますので、静かな場所に移動していただいたり、となりで一緒に同じ風景を眺めながら、ゆったりとした時間を共有してみるなどの工夫をしています。表情がにこやかになられることが多いです。実際のケア現場では、体調不良や排泄など生理的な訴えが多いようです。
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Q2 在宅におけるリスク管理のためには、家族の協力が必須だと思います。
家族指導のポイントがあれば教えていただきたい。
1つ1つの事象についてリスクを説明していてもキリがないですよね。
家族には概論的なことをどう説明すればよいのでしょうか?
A2  経験上、ご家族に対して直線的に話しても受け入れていただけないことがよくあり、反省の日々です。お伝えしたいことが十分に伝わるのは、ご家族から主体的に質問された時ですが、私の場合はご家族の不安材料をお聞きすることからはじめ、少しずつ本題に入っていくよう心がけています。音楽でいうイントロ(前奏)のようなイメージです。
 よく、在宅でご家族が訴えられるのが排泄の問題です。「水洗トイレをパットで詰まらせる。」「トイレに行く前に廊下で漏れてしまう。」「洗面所で排尿する。」などさまざまです。このような状況に直面されると、ご家族はご病気の症状を理解されていながらも、クライアントとの関係性においては良好というわけにはいかなくなります。

 本来であれば、認知症という病気を理解していただくことによって、ある程度ご家族の精神的疲労感は緩和できるのですが、心理状態が、膨らみすぎた風船のようにいっぱいいっぱいの場合は、何を説明しても受け入れていただくことが難しくなります。そのような場合は、風船の空気がぬけるようなイメージで、ご家族の負担感を傾聴します。
 ある程度、リラックスしていただいたのちに、客観的な解決策の提示や認知症の理解を深めていただいたりしています。
また、クライアントと主たる介護者がどのような関係にあるかによっても、ケアに対する考え方(クライアントとご家族との距離感)もことなりますので、関係性を分析した上で、説明方法を検討したり、説明するタイミングをはかられるのもひとつの方法かと思います。

クライアントと主たる介護者について、下記の3項目に分けてみました。

1、関係性によるとらえ方

       要介護者         主たる介護者

      要介護の男性 = 妻  実の娘  息子  息子の嫁  その他
      要介護の女性 = 夫  実の娘  息子  息子の嫁  その他

※ 主たる介護者が、血族の場合とそうでない場合です。

2、ご家族の介護に対する認識によるとらえ方

      @積極的に勉強される介護者
      Aご自身の介護に自信を持っておられる介護者
      B無関心な介護者
      C几帳面な介護者
        etc
※ @〜Cは、一個人に内在するものと考えています。無関心と几帳面は一見相反する言葉ですが、その傾向が強い方と言う意味です。誰もが、よりよい介護に向けての可能性を持っておられますので、その可能性を引き出す事ができれば、よりよい家族指導ができるのではないでしょうか。

3、要介護者の生活暦や性格によるとらえ方  

      現役のころ、ご家族に対して献身的に尽くしてこられた要介護者
      現役のころ、自由気ままに生活してこられた要介護者

※ 要介護者の生活暦(性格?)と、介護の質(思い)が比例しているように思います。

上記のことを念頭におきながら、要介護者やご家族の時間の流れを意識してみましょう。ここでいう時間の流れとは、説明をご理解いただけるまでの時間という意味です。
説明する際、多くの情報を早い口調で話しても、理解されないどころか不快な感情を持たれたりして、信頼関係の構築ができないことがよくあります。逆に、世間話のようなイメージでお話していると、説明したいことについてご家族から主体的に質問されることがあります。このタイミングで説明すると円満に解決することが多いです。ご家族の時間の流れを意識しながらあせることなく説明できれば、ご家族のストレスも軽減できるかもしれません。
 ただし、ここで「理解する。」ということと「行動できる。」ということは、イコールではないことを、説明する側は認識しておく必要があると思います。

※ 説明のタイミングが難しいと思いますので、日々ご家族とコミュニケーションを大切にしていただければと思います。ただし、生命にかかわる緊急性の高いものは、優先されなければなりません。イントロ(前奏)なし、交響曲第五番♪運命のように・・・。
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Q3 介護する側が認識しているレベルで家族にもリスクのレベルを認識していただくためにはどのような工夫が必要だと思われますか?
A3 説明側の説明力やご家族の介護力(理解力)にもよりますが、あせることなく今の時点で必要と思われる目標をひとつだけ提案して、ハードルを低くし確実にひとつずつクリアしていくことでしょうか。

例えば、ご理解いただくレベルにも、長期目標と短期目標を設定し、認識していただける範囲のリスクをお話しながら、少しずつ次のステップにいざなっていく設計図のようなものがあれば、ご家族のリスクレベルの認識も無理なく上がっていくのではないかと思います。
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Q4 認認介護が増えています。どうしたら良いでしょう。
A4 在宅生活を継続する上でハイリスクな事例だと思います。火の不始末・夜間徘徊・衛生管理・金銭管理・病状把握・食生活など解決するべき課題は多いです。

まず、要介護者と介護者について明確な意思決定が可能かどうかを検討し、成年後見制度活用などの必要性の有無についてアセスメントが必要だと思います。課題分析した後、関連職種や地域でネットワークをつくり、フォーマルサービス・インフォーマルサービスなど見守り体制をしくことにより、結果として認知力低下を補完することができれば、在宅生活を継続することができるように思います。
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Q5 認定調査で調査員は認知症状についてどのように評価しているのか(できているのか)?(本人のみの場合特にギモンです)
A5 調査員は厚生労働省から示された「要介護認定 認定調査員テキスト」に、以下の“調査実施上の留意事項”を守って調査を行うことが求められ、同時に研修会においても同様の指導がされています。

1.できるだけ調査対象者本人、介護者双方から聞き取りを行うように努める。必要に応じて、調査対象者、介護者から個別に聞き取る時間を設けるよう工夫する。

2. 独居老人や施設入所者等に対して可能な限り家族や施設職員等、調査対象者の日頃の状況を把握している者に立会いを求め、出来るだけ正確な調査を行うよう努める。
従いまして、本人からの聞き取りはもちろんですが、ご家族、サービス利用者であれば、その事業者からも聞き取りを行い、認知症の状態把握に努め、その状態を特記事項に記載し、「認知症高齢者の日常生活自立度」の判断基準に沿って評価されていると思われます。

本人を前にして聞き難い認知症状やBPSD・周辺症状等については、訪問先の別の部屋、無理なら後に電話などで、家族等に確認している現状もあります。どうしても本人とだけしか面接できないケースでは、その旨が特記事項として記載され提出される調査票もあります。

又、極少数の調査員において不適切な調査或いは認知症についての知識不足から、適正な評価がなされていないケースも想定されますが、認定審査においては審査資料として調査票の他に主治医意見書があります。認知症に関して調査結果と意見書との間に乖離がある場合には、一層慎重な審査を心掛け、それが著しく「再調査」が必要と判断された際には、認定審査会から再調査を指示するなどして認知症が適正に審査されるように努めています。
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Q6 認知機能の評価はどんなスケールが良いのでしょうか?(本人のストレス、客観性、簡便か?誰でもできる、短時間で、万国共通で)
A6 認知症のスクリーニングテストで一般的なのが、改定長谷川式簡易知能評価スケール(HDS−R)ですが、回答ができない場合は、N式老年者用精神状態尺度(NMスケール)など行動観察の方法もあります。また、MMSE(Mini-Mental StateExamination)もよく使用されています。

認知症の進行具合をチェックしたり、前頭葉型認知症を診断・鑑別する検査として前頭葉機能検査(FAB)があります。
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Q7 学習療法的なものを含め専門職は誰でしょうか?
A7 『学習療法R』は東北大学・川島隆太教授と公文教育研究会の登録商標です。学研が認定している学習療法士1級・2級が専門職となります。

音楽療法士は、日本音楽療法学会が認定しています。2009年現在、全国で1300名ほどの音楽療法士が認定されています。また、独自の認定制度を設けている県もあります。

園芸療法については、2008年(平成20年)3月に日本園芸療法学会が設立され、日本園芸療法学会登録園芸療法士の資格認定を行うこととなっています。これからの専門職ではないかと思います。
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Q8 市町村等の一般市民や子供向けの啓発や正しい理解への取り組みについて紹介して頂ければ幸いです。
A8 近日掲載します。
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Q9 認知症ケアで女性はいろいろ参加して下さるのですが、男性の参加をしてもらう良い方法は?
A9 男性の方で、認知症に限らず介護に携わっておられる率は低いです。男性は仕事、女性は家事・育児という風潮のなかで生きてこられた世代ですので、男性のための介護教室を開催するなどして、入りやすいところからはじめ、少しずつでも前向きに啓発活動を継続していく必要があると思います。例えば、実際に奥様の介護をしていらっしゃるご主人の「ふかイイ話を聴く会」などはいかがでしょうか。
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Q10 施設での問題行動を家族にどう伝えるか。上手な伝え方
A10 ご家族の介護に対する負担感に配慮しながら、否定的な言葉にならないように注意していますが、その前に、問題と思われる行動には必ず理由があります。それがわかれば、問題ではなくなり解決策もでてきます。解決できれば、ご家族にお伝えすることもなくなります。施設のケア技術で解決できることも少なくありません。ご家族にお伝えになるまえに、施設側との詳細な検討会などを期待したいと思います。

※ 最近のケアでは、問題行動という表現はしなくなりました。行動障害とか、周辺症状という表現をしています。
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Q11 医師会で認知症ケアについてどれだけご理解があるでしょうか。Drによってとても差があると思います。
A11 鳥取県西部医師会では認知症について、医療とケアへの理解と知識を深めるために、平成18年から年4回の「かかりつけ医認知症対応力向上研修」を開催し、また認知症に関する講演会開催についても広く医師会員に案内しているところです。

残念ながら、同研修会や講演会への参加者は少数固定傾向となり、なかなか一定以上に広まらないのが現状です。
そのようなことから、ご指摘の疑問が示されたと推察致します。

西部医師会としましては、今後も研修会を継続すると共に1人でも多くの会員の先生方にご参加頂くよう努めます。
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